私達の論文「Towards AI-driven radiology education: A self-supervised segmentation-based framework for high-precision medical image editing」が、医用画像処理のトップカンファレンスであるThe 26th International Conference on Medical Image Computing and Computer Assisted Intervention(MICCAI 2023)に採択されました。本論文は早期採択の中で上位14%に選ばれました。
医学教育は、患者に対する最良のケアを実現するために必要不可欠ですが、医学教育のための教材を実世界のデータを利用して作成することには、多くの課題があります。例えば、わずかでありながらも医学的に重要な所見の有無によって、疾患の診断や治療方針が異なることがあります。しかしながら、こうした所見の有無を初学者にわかりやすく伝えることができるように医用画像を収集するためには、しばしば大きな労力を要します。
そこで、私達は、医療者が意図した通りの所見を有する医用画像を合成するための、医用画像編集技術を開発しました。この技術では、自己教師あり学習によって獲得したセグメンテーションラベルを活用することで、任意の解剖学的要素を編集することを可能にします。特に、医用画像に含まれる解剖学的要素の臨床的な意味合いは、画像に対して与えられる一定の画像変換に対して不変であろうとの仮定を用いることで、自己教師あり学習によるセグメンテーションを行いました。このセグメンテーションラベルを編集することによって、意図した通りの所見を含む医用画像を合成することが出来るようになりました。5人の専門医による評価によって、医用画像として自然な見た目を有する画像を合成できることや、特定の疾患の特徴を正確に編集できることが示されました。
私達の技術によって、医学教育の現場でのAIの活用が広がることで、医学教育がより正確で、誰にとってもアクセスし易いものとなり、結果として患者に対する最良のケアの実現につながることを期待します。
- 著者:
小林 和馬 (国立がん研究センター研究所、理化学研究所革新知能統合研究センター)
谷 林 (理化学研究所革新知能統合研究センター)
幡谷 龍一郎 (理化学研究所情報統合本部、国立がん研究センター研究所)
三宅 基隆 (国立がん研究センター中央病院)
高見澤 康之 (国立がん研究センター中央病院)
伊藤 その (国立がん研究センター中央病院)
渡辺 裕一 (国立がん研究センター中央病院)
吉田 幸弘 (国立がん研究センター中央病院)
吉村 弘記 (広島大学)
原田 達也 (東京大学、理化学研究所革新知能統合研究センター)
浜本 隆二 (国立がん研究センター研究所、理化学研究所革新知能統合研究センター)