2022/2/24 13:59

AI等が公認会計士業務に及ぼす影響を分析
‐AI等の活用により公認会計士業務の生産性を向上させる可能性をシミュレーション-

理化学研究所革新知能統合研究センター経済経営情報融合分析チーム(チームリーダー:星野崇宏)は日本公認会計士協会と協力し行った研究結果として「AI 等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響」と題する研究報告書を公表しました。

報告書の全文は、日本公認会計士協会のホームページでお読みいただけます。
AI 等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響

本研究は、公認会計士が行う監査業務について、主査(監査業務における現場責任者を指す)と補助者(主査を補助する役割で実務経験が相対的に少ない者を指す)の業務をそれぞれ10 の要素に区分し、各要素の内容について、AI 等による業務の代替可能性を推計しました。また、監査従事者に対するアンケート調査を通じて得られた各業務要素の人事評価上の重要度、業務従事者の労働時間、業務従事者の報酬等に関する情報を踏まえ、AI 等の活用が進んだ将来において見込まれる監査業務の生産性の変化に係るシミュレーションを実施しました。

  • 背景
    昨今、AIをはじめとするテクノロジーの発達は目覚ましく、様々な業界においてテクノロジーの実装が進んでいます。このような中、技術進歩が一層進んだ将来において、人間が行っていた仕事がAI等によって奪われるのではないかという言説が聞かれる状況となっています。
    しかしながら、人間が行う仕事は様々な要素の組合せで成り立っており、その中にはAI等が得意とする領域もあれば、苦手とする領域も存在します。そこで、各職種の業務内容を十分に理解した上で、AI等の活用により生産性が向上する領域を識別し、適切にAI等の実装を進めていくことが重要だと考えられます。
    本研究では、専門職である公認会計士を取り上げ、公認会計士が実施する中核的な業務である監査業務を対象として、業務に関する詳細な調査や、監査法人(複数の公認会計士により組成される法人のこと)において実施したアンケート調査から入手した情報を踏まえた上で、AI等を活用することにより業務の生産性が向上する可能性について実証的な研究を行いました。
  • 研究手法の概要
    研究手法の概要は以下のとおりです。
    1.監査業務を細分化し、デルファイ法を用いた上で、各業務要素についてAI等への代替可能性を評価する。
    2.監査法人におけるアンケート調査を通じて、各業務要素が人事評価に与える影響について、コンジョイント分析を用いて評価する。
    その上で、1.によって得られたAI等への代替可能性との相関関係を分析する。
    3.監査法人におけるアンケート調査を通じて得られた労働時間、報酬等の情報を用いて、AI等への代替可能性が高い領域に費やしていた人的資源を、AI等への代替可能性が低い領域にシフトすることで生産性がどの程度向上するのかについてシミュレーションを行う。
  • 本研究を実施した結果、以下の結果が得られました。
    1.AI等への代替可能性を評価した結果、平均して主査の業務については10年後に34.7%、30年後に45.6%が、補助者の業務については、10年後に50.5%、30年後に60.6%がAIに代替されると予測された。
    2.AI等への代替可能性が高いと評価された業務要素については、人事評価において重要性が高くないとされる傾向があるなど、一定の相関関係が見られた。
    3.各業務要素のAI等への代替可能性、労働時間、報酬等の情報を用いて定量的に生産性向上額を測定した結果、主査業務については10年後に32.0%,30年後に42.5%,補助者業務については10年後に48.4%,30年後に58.0%が,AIに代替されることで生産性が向上する可能性があると評価された。
  • 研究担当者
    理化学研究所革新知能統合研究センター 経済経営情報融合分析チーム
    星野 崇宏 チームリーダー/慶應義塾大学経済学部教授
    上野 雄史 客員研究員/静岡県立大学経営情報学部教授
    加藤 諒 客員研究員/神戸大学経済経営研究所准教授
    中村 元彦 千葉商科大学大学院会計ファイナンス研究科教授(研究協力者)

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last updated on 2022/8/16 14:03研究室