2022年4月26日公開
2022年5月2日更新
有限温度状態での量子もつれに関する普遍的性質の発見
-有限温度では標準的な長距離量子もつれは存在しない-
理化学研究所(理研)革新知能統合研究センター数理科学チームの桑原知剛研究員(研究当時、現開拓研究本部桑原量子複雑性解析理研白眉研究チーム理研白眉研究チームリーダー、量子コンピュータ研究センター量子複雑性解析理研白眉研究チーム理研白眉研究チームリーダー)と慶應義塾大学理工学部の齊藤圭司教授の共同研究チームは、量子力学に従う多粒子系(量子多体系)の熱平衡状態では、一般に長距離に及ぶ「量子もつれ」が存在しないことを示しました。
量子コンピュータを使った量子計算には、量子もつれが本質的な役割を果たすため、量子もつれの有限温度における効果を解き明かすことは重要な未解決問題の一つでした。
今回、共同研究チームは二つの領域で定義される標準的な 2 者間の量子もつれの量を解析的に評価し、十分離れている二つの領域間に生じる量子もつれは有限温度において劇的に小さくなることを突き止めました。この結果は、一般的な量子多体系において、2 者間の量子もつれは絶対零度(約-273°C)では存在し得ますが、有限温度では、特殊な 3 者間量子もつれ以外は生き残ることができないことを示しています。
本研究成果は、量子機械学習を含む量子計算に関する手掛かりを多く与えるとともに、有限温度で観測されるさまざまな量子的物理現象に関与する量子もつれの分類研究に寄与すると期待できます。
本研究は、オンライン科学雑誌『Physical Review X』(4 月 27 日付)に掲載されます。
論文情報
<タイトル>
Exponential clustering of bipartite quantum entanglement at arbitrary temperatures
<著者名>
Tomotaka Kuwahara and Keiji Saito
<雑誌>
Physical Review X
研究支援
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金若手研究「テンソルネットワーク形式を用いた量子多体問題の計算複雑性解析(研究代表者:桑原知剛)」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ) 「量子多体理論を用いた量子計算機の高速アルゴリズムの開発(研究代表者:桑原知剛、JPMJPR2116)」による支援を受けて行われました。
詳細は、理化学研究所(広報室)のホームページをご覧ください。
-2022年4月26日 Webメディア掲載
-2022年4月28日 Webメディア掲載
- マイナビニュース 有限温度状態では標準的な長距離量子もつれは存在しないことを理研などが発見
- MIT Technology Review 理研など、有限温度では「量子もつれ」が存在しないことを発見
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