2019年3月29日
東京大学
長崎大学
キッコーマン株式会社
理化学研究所
科学技術振興機構
発表のポイント
- 抗寄生虫薬などとして期待されるアスコフラノンの生合成経路を解明し、さらに、遺伝子操作により、所望のアスコフラノンのみを選択的に大量生産するシステムの構築に成功した。
- 共通の前駆体より、アスコフラノンとアスコクロリン生合成へと分岐する、新規メロテルペノイド生合成経路を解明、さらに遺伝子操作による作り分けに成功した。
- 抗生物質を大量生産するスーパー微生物の創出によって、創薬研究の発展に貢献する。
発表概要
メロテルペノイド化合物(テルペンとポリケタイドの部分構造を併せ持つハイブリッド型化合物)は、コレステロール低下や免疫抑制活性など数々の生理作用を持つ天然化合物です。その複雑な骨格を化学合成するのは容易でなく、生物生産系による物質生産が期待されていました。
東京大学大学院薬学系研究科の阿部郁朗教授、淡川孝義講師、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北 潔研究科長(東京大学名誉教授)、理化学研究所革新知能統合研究センター遺伝統計学チームの松崎素道研究員(論文投稿時は国立感染症研究所 所属)、キッコーマン株式会社の荒木康子研究員、伊藤考太郎チームリーダーらの研究グループは、抗寄生虫、抗腫瘍など多様な生理活性を持つ微生物由来のメロテルペノイド化合物アスコフラノンと、その類縁化合物であるアスコクロリンの生合成経路を解明し、アスコクロリン生合成経路を遺伝子破壊することで、1リットルあたり500mg を超える高収量のアスコフラノン選択的生産系の構築に世界で初めて成功しました。その生合成経路は、共通の前駆体から特異な酸化酵素とテルペン環化酵素によって二つの生合成系が分岐する、新規性の高い経路でした。
本研究成果は、医薬品シードとして極めて有望であるアスコフラノンの安価な大量生産が実現するに留まらず、新規骨格メロテルペノイド創出の基盤構築を通して幅広い創薬研究へ貢献することが期待されます。
本研究成果は、米国東部時間2019年4月1日15時(日本時間2日午前4時)に、米国科学アカデミー紀要PNASで公開されました。
くわしくは、東京大学のウエブをご覧ください。
論文情報
題目: | Complete biosynthetic pathways of ascofuranone and ascochlorin in Acremonium egyptiacum |
著者: | Yasuko Araki, Takayoshi Awakawa, Motomichi Matsuzaki, Rihe Cho, Yudai Matsuda, Shotaro Hoshino, Yasutomo Shinohara, Masaichi Yamamoto, Yasutoshi Kido, Daniel K. Inaoka, Kisaburo Nagamune, Kotaro Ito, Ikuro Abe, and Kiyoshi Kita |
雑誌: | 「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」 DOI: 10.1073/pnas.1819254116 |
掲載情報
化学工業日報(4/3)
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