東北大学の脳と心の研究推進室の高橋雄太医員(東北大学病院精神科)と富田博秋教授、リスク統計解析室の田宮元教授(理化学研究所AIPセンター 遺伝統計学チームのチームリーダを兼務)のグループによる、血中の代謝物濃度分布に数理モデルを応用してうつ病に関する症状(うつ症状)との関連を調べた論文が、Translational Psychiatry誌に掲載されました。
本研究では、東北メディカル・メガバンク機構による血漿オミックス解析結果を収載したデータベースである日本人多層オミックス参照パネル(jMorp)が使用されています。jMorpで公開されている情報のうち、代謝物の情報を用いて、複数の数理モデル間での予測精度の違いを検討しました。そして、理化学研究所AIPセンター 高次元統計モデリングチームの山田誠チームリーダーらが開発したthe Hilbert–Schmidt independence criterion least absolute shrinkage and selection operator (HSIC Lasso)法を用いたモデルが、従来の数理モデルを用いた予測よりも、代謝物からうつ症状のより多くを説明できることを示しました。
うつ症状を血漿代謝物から予測しようとする試みは、個別化医療や病態生理解明の目的で、これまでにも世界的に行われていますが、使われるデータサイズが小さいことや、代謝物と精神症状の複雑な関係を説明する適切な数理モデルがないことが問題となっていました。本研究はうつ症状を代謝物から予測する研究としては、世界最大規模のものです。
書誌情報
タイトル:Improved metabolomic data-based prediction of depressive symptoms using nonlinear machine learning with feature selection
著者名:Yuta Takahashi, Masao Ueki, Makoto Yamada, Gen Tamiya, Ikuko N. Motoike, Daisuke Saigusa, Miyuki Sakurai, Fuji Nagami, Soichi Ogishima, Seizo Koshiba, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto, Hiroaki Tomita
掲載誌:Translational Psychiatry
Published online: 19 May 2020
DOI: 10.1038/s41398-020-0831-9